■ 嗚呼!感動 マリオブラザーズの青春
先日キモイマリオについての記事を書いたところ、himukaiさんに情報を頂いて調べました。
ファミコン通信というアスキー出版の家庭用ゲーム雑誌の連載に石原豪人氏の絵で載ったようです。当時のファミ通はこんなことばっかりやってたような記憶があります。丁度
ファミマガがウソ技(テク)で隆盛を極めていた頃でしょうか
ネット上を徘徊して全ての物語をやっと見つけました。遠慮なく保管させていただきます。
登場人物は
若い頃のキモいマリオとノコノコ(コワイヨー)
全然かわいくないピーチ姫とやっぱり同様にキモいルイージ
悪役度満点のクッパ(着ぐるみかよ!)
世界のクロサワなのか?
と魅力満点なキャストで描かれるマリオの青春。
今全貌が解き明かされる!
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■ 笑顔の向こう側に彼が守りたかった物
彼はそのとき途方にくれていた。
新しい部屋、新しい車、そして何より新しい彼女。
これでよかったんだと自分に言い聞かせる。そんなときは決まって、今までの思い出が走馬灯のようにゆっくりとゆっくりと頭の中を走り抜けていく・・・
あれは3年前の桜の咲く頃だった。当時は社会人になりたての頃に彼と彼女は出会った。
彼は彼女の明るい笑顔にひかれた。あまり口数が多いとは言えない彼は、その彼女の笑顔が自分まで明るくしてくれるようにさえ錯覚していた。
ありふれた言い方をすると彼女はまさに太陽のようだった。
いつしか彼は自分の目線の先が常に彼女のところにあることに気づきはじめた。
これは恋・・・
彼がそう思ったときには二人はすでに接近していた。今まで見せることがなかった程、彼は衝動的に彼女との時間を増やしていた。
彼女も普段物静かな彼が時折見せる、燃えるような情熱をふつふつと感じ、答えた。
二人は元々そうなる予定だったかのように、付き合いを始めた。週末はいつも彼の家に彼女が来てささやかな食事会を開いた。
彼はこの幸せをかみしめ、このまま時が止まってしまえばといつも思っていた。この胸の高鳴りを信じて。
それから2年。彼は焦っていた。いつまでも自分の手の中にいようとしない彼女に。
何が問題なのかは誰もわからない。
もしかしたら彼女はまだ若すぎたのかもしれない。彼もそんな彼女に苛立っていたのかもしれない。
彼女は元々の人当たりのよさから幸か不幸か友人も多く、夜でかけることもしばしばだった。
「結婚しよう」
彼がそう言ったとき、彼女は正直慌てた。彼女も彼のことは確かに愛していた。
でも彼女はベッドの中や、ケンカをして仲直りをしたとき、友人の前でひやかされたときにはそう言ったことはあるものの、自分の中で現実として「結婚」の2文字は受け止めることは出来なかった。
いろいろなことが彼女の中に巡っては消え、一瞬の間に多くの事を考えた。そうは思ったものの彼女はうれしかった。
彼の正直な気持ちが伝わって素直に喜ぶことができたからだ。
彼が自分の気持ちをストレートに伝えてくれたことがなかったせいもあってその言葉はやはりうれしかった。
「いいよ」
彼女は真剣に答えた。いつもなら冗談でも言って笑い飛ばせるのに。
それから半年。何もかもが変わった。彼は仕事を変え、環境も変わった。同じ職場の頃は合っていた休みも合わなくなり、彼も新しい職場でつらいこともあっただろう。
今となっては何が原因だったのかは理解することさえ難しいことだが、二人の間に少しずつ、亀裂が入っていった。それは手抜き工事を施したコンクリートの壁が月日を経て少しずつ、少しずつひび割れていく様に似ていた。
彼女は人一倍さびしがり屋な所もあったから、忙しい彼と会えないときはいつも誰かを誘って夜の街へ出かけていった。
彼はそんな彼女を叱るともせず、ただ黙って見ていた。彼女を信じていた。あのとき
「いいよ」
と言ってくれた彼女の照れくさそうな、それでいて幸せそうな笑顔を。
「あいつなら分かってくれる。」そう言い聞かせながら。
その男と彼女が関係をもってしまったのは夏の暑い夜だった。いつもの会社の飲み会の後、彼女は男に車で送ってもらっていた。職場では先輩だったその男も彼の元同僚だから彼女にとってその男は兄のような存在だった。
彼とケンカしたときは決まって男に電話して愚痴をこぼしていた。男はいつも彼女の愚痴に反発して叱っていた。その夜も彼女の愚痴から始まった。男は彼女に説教しながら、彼女のことを密かに想っていた。彼女の事にひかれながらも、元同僚の彼とはよく飲みに行く程の間柄だから彼には幸せになってほしい。
でもその夜は違った。営業成績も伸び悩み、仕事がうまくいかなくて自暴自棄になっていたのかもしれない。彼はいきなり彼女の唇を奪った。
彼女にとってあのキスは忘れられないものになった。もう結婚式の式場も決まり、後は式をするばかりの状況で彼女は慌てた。知らず知らずのうちに男のことが気になってきている自分に。
結婚式まで後半年というときに彼女は禁断の実をついに食べてしまったのだ。
男と彼女はその絶対秘密の情事に燃え上がった。結婚までの期限付きの恋愛。結婚が近づくにつれ彼女は困惑した。気がついたら生活の中心に男が入ってしまっていた。
結婚なんてやめてすぐにでも男の元に走りたい、そう願うようにさえなってしまった。
彼はというと相変わらず、自分のすることを黙って傍観するだけ。どうしていいか分からない、ストレスのたまる毎日を彼女は過ごした。
結婚式は幸せだった。彼は安心していた。やっとあの彼女が自分のものになった満足感でいっぱいだった。結婚前はケンカの毎日だった。でもそんなつらい日々も今となってはいい思い出、とさえ思うようにさえなっていた。彼女のほうは相変わらず男のことを考えていた。
新婚旅行の夜、本当だったら誰もが幸せ一杯になる夜に彼女は全てを打ち明けた。
彼はその事実に愕然とした。彼女に腹をたてる代わりに自分に腹をたてた。なぜもっと早く手をうたなかったのか!
彼もうすうす気づいていた。結婚という儀式がそれを救ってくれるような気がして彼は安心していたのかもしれない。
悪夢のような一週間の海外旅行を終え、帰国した後は、何もする気がおきない、無気力な、毎日が暗闇のような日々を彼は過ごした。
今ではあの事が遠い昔のように彼は感じていた。今の彼女との暮らしも悪くない。
それまで一度も頭から離れることがなかった前の彼女のことを最近忘れてしまうことがある。今の彼女はそれを忘れさせてくれる何かを持っていた。
君がいなかったら俺はどうなってたかわからないよ。
と彼は彼女にいつも言う。彼女はそんなとき決まって照れくさそうな笑顔を見せる。前の彼女を彷彿させるその笑顔。今度は本物だと彼は実感している。
この笑顔をずっと守りたい。彼は冬から徐々に変わり始めた夏の星座を眺め、思うのだった。
■ 黒い三年生
時は201X年------
そこは今や犯罪の巣窟となってしまったシヴヤ。以前の若者の街というイメージはとうの昔に消え、新宿と並ぶ暗黒街として恐れられている。
ここでは、純粋な日本人は少なく、国籍不明の人々が巣食い、言語も文化も独自のものが発達しているという。
我々は危険すぎるという理由から通常入ることができないとされている、特A地区に潜入することができた。
そこは快楽と欲望の渦巻く街シヴヤ。我々はその街に溶け込むべく、現地の服装を着込んだ。
現地の案内役の通称「ジェイ」も我々を案内したことを後悔しているようだ。
「ハヤクカエリタイー」
彼の日本語はシヴヤに汚染されているようだ。
突然、耳をつんざく音が聞こえてきた。鉄を引っかく音とも、動物の鳴き声ともつかぬ、耳を覆いたくなるような音。シヴヤには獰猛な生き物が生息しているというウワサはホントだったのか。
だんだん音が大きくなる。その音がヒトらしきものの話す声だとわかったのは、それが随分近づいてからだった。
人ごみに紛れてその姿は見えない。
恐怖のあまりジェイが逆方向に逃げ出した。
「サヨナラー」
これだから最近の若者は・・・愚痴をこぼしそうになった瞬間
突然目の前が真っ暗になった。
でかい。私は恐怖のあまりそこを動くことが出来なかった。
ソレは3ついるようだった。
「は、速い。」
どうやら、我々は囲まれたようだ。ヤツらは我々を翻弄するかのように、右へ左へと我々を威嚇する。
飛び交う奇声、怒号、私はカバンの中に潜ませた隠しカメラのシャッターを切りつづけた。
奴等の攻撃が始まった。チームの中でも年長の私がどうやら奴等のターゲットのようだった。怒涛の攻撃で倒れた仲間たちには目もくれず、私のほうににじり寄ってくる。
「ひぃぃぃぃー!」
薄れていく記憶の中、私は恐怖とは裏腹に懐かしい想いにかられていた。この気持ちは何だろう。スレッガー中尉?いや、マチルダさん?
しばしの郷愁にも似た思考の後、黒い3連星のジェットストリームアタック・・・・・懐かしのファーストガンダムに出てくるドムがフラッシュバックする。
・・・・気が付いたら病院の中だった。我々は身ぐるみをはがされ、金目のものを一切奪われていた。
幸運にも隠しカメラは壊されていたが、一枚だけ犯人を収めた写真が生き残っていた。
後で逃げ出したジェイを捕まえて聞いたのだが、ヤツラは、
黒い3年生
と呼ばれているらしい。
その写真を公開したいと思う。
この写真は保存などをせず、見たら即ログを削除することをオススメする。
さもないと、黒い3年生があなたを狙うかもしれない、いや、もう既に狙われているかも・・・・
■ 先物投資物語 後編
悪徳営業マンKに薦められるがまま、先物取引を始めることになってしまったM君。
周りの友達や両親にきつく反対されるも知らん顔。
もういっぱしのディーラー気取りです。
彼にとっては営業マンKの言葉はまさにマジックで、彼の調子の良い言葉がまるで天の声にまで聞こえてしまう始末。もう後戻りはできません。
このときA君は気づかなかったのだろうか?悪徳営業マンKが自分と同じくらいの年齢なのにベンツを転がしていることを
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■ 先物投資物語 前編
知り合いのA君のオハナシ。再掲載です。2年前くらいのハナシでしょうか。
彼は誰にでも好かれる、明るいヒトだった。周りを明るくさせるなかなか他のヒトには真似できない良い面をもっていた。
そんな彼が去年の夏受けた、一本の電話が自分の人生を変えてしまうとは思ってもみなかっただろう。
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■ IT'S YOU
その時、彼女は海の方を向いたまま僕に言った。
「あなたのことがわからなくなったの・・・・」
突然の別れ。
波の音と彼女のか細い声がMIXされ、まるでJAZZのピアノのように美しく、今にも壊れそうに聴こえた。
「もう行かなくちゃ・・」
彼女との思い出の海。強い風が僕を襲う。もうまるで僕の声は波と風に打ち消され聞こえないだろう。
・・・あれから3年。またこの思い出の海に来てしまった。
今でも思い出す、彼女と、波と風が奏でる音楽に似た音。 あの時と同じく、風も波も僕を飲み込むかのように激しい。
真っ白い入道雲が夏の季節の到来を知らせてくれる。
ちょっと泣いてみようと思った。ちょっとした恋愛映画の主人公みたいな気分だった。悲しかったけど、不思議と涙は出なかった。
来てよかった、と僕は思った。夏の海は僕を暖かく迎えてくれた。新しい一歩を踏み出す為、持っていたウォークマンのヴォリュームを一杯に上げた。
joyce coolingの「it's you」
美しく、前向きなこの曲。いい音楽はこんなにも僕を前向きにさせてくれる。僕はこの曲を新しいヒトと出会ってもずっと聴きつづけるだろうと胸に秘め、海を背にした。
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■ WHITE CAFE
夏が来ると、必ず思い出すのが君と一緒にいつもいたあのカフェだ。
真っ白な壁、真っ白なテーブル、真っ白な椅子、真っ白なマスターの髪。
何もかも真っ白なあのカフェで君と僕は将来の夢やお互いの事、時には笑い転げるようなバカ話に花を咲かせたね。
君はいつも冷房も効かないあのカフェで、窓際の一番端の席をわざわざ選んでたね。
汗をかきながら熱いホットコーヒーを飲んで・・・
あの頃の事なら僕はどんなことでも思い出せるよ。
君の着ていたパタゴニアのTシャツ。くたびれたジーンズ。レッドウィングのブーツ。
マスターが僕らの為にプレゼントとしてかけてくれた、 boys town gangの「君の瞳に恋してる」。
君はマスターにせがんで、来る度にかけてもらってたっけ。
あの頃良く行っていた、小さなレコードショップでこの曲を見つけて衝動的に買って
しまった。あの頃の気持ちに戻りたくて。
今聴きながらこの手紙を書いてるよ。
・・・元気ですか?
ホントはそれだけを確認したくて、君にそのコトバを届けたくて、手紙を書いたんだ。
お互い離れてしまったけど、僕はいつまでも君のことを忘れない。
淋しくなんかないよ。この曲を聴けば、いつでも君が目の前に現れるから。
君の大きな二重の瞳に文字通り僕は恋をしていたんだと思う。
だから、「さよなら」のコトバは言わない。
僕はなんとか元気でやってるよ。
新しい生活もやってみればまんざらでもないよ。良い友人たちに恵まれて、僕は幸せだと思う。
タケシなんかは、やっと遊んでくれるヤツが出てきて逆に喜んでる。
・・・・もう昔の思い出にふけってもきりがないので、この辺でやめとく。
いつまでも元気で、そしていつまでも周りを幸せにしてしまう程明るい君でいて欲しい。
それでは・・・・・
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■ リベラの奇跡
荒れ狂う炎の中でリベラは神に祈りを捧げるばかりであった。
そこには神が存在した―――。
リベラは少年時代を暗い、失望のどん底で過ごした。
誰もが思い出すと、想いにふけるはずの少年時代をリベラは二度と思い出したくなかった。
昨日まで仲が良かった友人たちもまるで敵のようにさえ思えた。もう俺の人生は終わり。何度も死のうと考えた。
リベラは近視を直す為、手術をした。医者は常に逃げ道をつくるものだ。医者は確率のせいにし、時折はリベラのせいにもした。要は失敗したのだ。
リベラは失明したのだ。
それは忘れもしない、高度成長期の真っ只中、誰もが幸せに向かって生きているはずの1980年、12月20日のことだった。入院する前、母親はクリスマスの飾り付けをしていた。病院に行く車の中で、リベラにこう言った。
「頑張って手術をすれば、サンタさんがプレゼントを持ってきてくれるからね。」
あれから、毎年楽しみにしていたサンタクロースのことが、リベラは大嫌いになった。無論、クリスマスも。
見舞いに来てくれた友達にも悪態をついた。クラスの人気者だったリベラの見舞いをする友達も日に日に減っていった。
そんなリベラにも信頼できるものが3つだけあった。
ひとつは、幼い頃から、ずっとリベラのそばにいてくれた、ジェニファー。彼女は彼のことを絶対に障害者としてではなく、一人の男として接した。それがリベラには嬉しかった。
もうひとつは、ポール。ビートルズが大好きだった彼はジェニファーとの間に生まれた男の子をポールと名づけた。
ポールも目が見えないリベラになかなかなつかなかったが、6歳のポールとは今では親友だ。
もうひとつは、サルティ。ポールが生まれたときにやってきたラブラドールレトリバーの盲導犬だ。
盲導犬を呼ぶことを頑なに拒んでいたリベラはポールの出産によって、必要に迫られサルティと出会った。
サルティは他のどの犬よりもやんちゃで、他のどの犬よりも利口だった。利口な点を除けば、盲導犬は失格だった。しかし、リベラはサルティを選んだ。完璧ではない身体の自分にサルティが重なって見えたからだ。
苦労はあったものの、サルティはジェニファー、ポールと同様、リベラの生活になくてはならないものをもたらしてくれた。
リベラは幸せだった。手術の失敗後から10年、家族という素晴らしいものを見つけ、幼少からの夢、ニューヨークで貿易の仕事にもつくことができていた。毎日が充実していた。
そんなある日、悪夢は起こった。
NYの世界貿易センタービルの71階で仕事をしているリベラのそばでは嘘のようにおとなしいサルティが珍しく吠えていた。
「サルティ、どうしたんだい?」
サルティは何かを察知したかのように、何かに吠え立てていた。そして、非常階段へと主人を促した。
耳をつんざく爆音。ビルに飛行機が突っ込むなんてリベラは知る由もないのだが、悪夢は再び起こった。
リベラはいやなことが起こると、あの手術のことを思い出す。どんなに嫌な事が起こっても、あの目の手術の失敗の後よりもつらいことはもう起こらないだろうと。
地震のような揺れの後、当然のように火事は起こった。目の見えないリベラにとって、炎ほど怖いものはなかった。
爆音に驚いて、サルティはどこかに行ってしまったようだ。
リベラは周りの同僚たちが逃げ惑って行ってしまうのを見計らったように、ゆっくりと手探りで階段を下りていった。
階段をゆっくり下りながら、リベラは神の存在を疑った。何故俺だけがこんな目にあう?神は何故俺にだけこんなにつらくあたるのだ?
どれくらい階段を下りただろう?煙や油のにおいで非常階段は壮絶だった。逃げ惑う人たちの足音だけが上から下に響いた。
リベラは今度こそ、本当に諦めた。俺はもうだめだ・・・・
ふとジェニファーとポールのことが頭をよぎった。失いたくない。だめなんて絶対思いたくない。
そう思ったとき、あの愛すべき親友が戻ってきた。サルティはリベラの心を励ますかのように、リベラのそばにぴったりとついた。
一歩一歩階段をちゃんと踏み外さないように段差があるときには気をつけろの合図を、炎があるときはストップの合図を、的確にリベラに伝え続けた。
「ありがとう。ありがとう。」
サルティにも、そして神にも感謝した。
涙はあふれ出して止まらなかった。
サルティさえいれば俺は家族の元へ帰れる、そう確信した。
サルティはぴったりと、一度もリベラから離れることなく、ビルを降りきった。
それは盲導犬としての仕事としてではなく、一人の親友を失いたくない、というサルティの気持ちの表れだったのかもしれない。
ビルから出て、まもなくビルが崩壊した後、二人にはもはや事件の原因など、どうでも良かった。少しでも早く、家にいる二人に会いたかった。そして、無事である喜びを報告したかった。
リベラはサルティにもう一度ありがとうを言い、帰ったらご馳走することを約束した。
するとサルティは嬉しそうに一度だけ吠え、大好きなご主人の手を一度だけペロリとなめた。
まるで、
「リベラ、これくらいお安い御用だよ。」
と言っているようだった。
二人はマスコミや野次馬で騒然としている街の中を、寄り添うようにゆっくりと、毅然とした態度で、ジェニファーとポールの待つあの暖かい我が家へと向かった。
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